性別を理由とする差別の禁止(労働契約)

起業、開業したときに労働者を雇用する労働契約を締結する際、性別を理由とする差別的な定めをすることは禁じられています。女性より男性に有利な条件はもとより、その逆の男性より女性を有利に取り扱う契約も禁じられています。

ただ、一般的には男性より女性のほうが不利に取り扱われる場合が多いので、女性への不利益取扱いについて解説します。

婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの事項は以下の通りです。

  1. 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定め※1をしてはならない。
  2. 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
  3. 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるもの※2を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱い※3をしてはならない。
  4. 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

※1予定する定めとは女性労働者が婚姻、妊娠又は出産した場合には退職する旨をあらかじめ労働協約、就業規則又は労働契約に定めることをいうほか、労働契約の締結に際し労働者がいわゆる念書を提出する場合や、婚姻、妊娠又は出産した場合の退職慣行について、事業主が事実上退職制度として運用しているような実態がある場合も含まれます。

※2厚生労働省令で定めるものとは次の事項をいいます。

  1. 妊娠したこと
  2. 出産したこと
  3. 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと
  4. 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと
  5. 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと
  6. 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと
  7. 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと
  8. 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと
  9. 妊娠又は出産に起因する症状(つわり、妊娠悪阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因 して妊産婦に生じる症状)により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと

※3解雇その他不利益な取扱いには次のようなものが該当します。

  1. 解雇すること
  2. 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  3. あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  4. 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  5. 降格させること
  6. 就業環境を害すること
  7. 不利益な自宅待機を命ずること
  8. 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  9. 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  10. 不利益な配置の変更を行うこと
  11. 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

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